論文 - 岩船 昌起
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岩船昌起 . 自主防災組織と火山防災――鹿児島市における桜島大噴火への備え . 都市問題116 ( 8 ) 73 - 87 2025年8月招待
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担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
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村山良之・田中 靖・小田隆史・桜井愛子・牛山素行・西村智博・田中耕市・関口豪之・秦 朋弘・ 高野宗弘・岩船昌起・青木賢人 . 避難の地理学 ―避難に関わる様々な課題の解決に向けて― . E-journal GEO20 ( 2 ) 1 - 4 2025年8月
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担当区分:責任著者 記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(学術雑誌)
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荒木 一視, 楮原 京子, 桐村 喬, 田中 耕市, 熊谷 美香, 保井 智香子, 菅野 拓, 岩船 昌起, 青木 賢人 . 救援活動拠点・避難所の配置と地理学の貢献 . 20 ( 1 ) 21 - 24 2025年6月
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記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(研究会,シンポジウム資料等) 出版者・発行元:公益社団法人 日本地理学会
DOI: 10.4157/ejgeo.20.21
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岩船 昌起 . 東日本大震災にかかわる津波避難と防災教育の振り返り . 日本地理学会発表要旨集2025s ( 0 ) 141 2025年3月
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担当区分:筆頭著者, 責任著者 記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(研究会,シンポジウム資料等) 出版者・発行元:公益社団法人 日本地理学会
<p><b>Ⅰ はじめに</b></p><p> 本発表では,東日本大震災にかかわる津波避難と防災教育を振り返り,津波到達時間が短い津波が想定される地域での防災教育実践事例を紹介しつつ,南海トラフ地震を始めとする津波避難対策の今後を展望する。</p><p><b>Ⅱ 東日本大震災時の津波の概要</b></p><p> 岩手県の沿岸では,2011年3月11日14時46分頃の地震発生から30~50分後で津波の最大波が到達している(気象庁2011等)。津波により浸水が始まり,「高台への立退き避難(以降,高台避難)」が困難になり始めた時間が,防潮堤の有無や高さ等にもよるが,地震発生から概ね20分後以降と推測される。津波は,外洋に面した半島海側等では20~30 m程度まで遡上し,湾内では,湾の形状にもよるが,10m弱~20 m程度の高さであった(気象庁2011等)。岩手県では,沖積平野等の低標高地に住家を構える多くの住民は,大半が「高台への立退き避難(以降,高台避難)」を行い,逃げ遅れ等による一部が住家2階等への「垂直避難」で助かった。</p><p><b>Ⅲ 東日本大震災時の津波避難行動の特徴の一端</b></p><p> 東日本大震災時の津波避難では,浸水(想定)域に脱するまでに,地震発生から概ね20分かそれ以上の時間的な猶予があったことが,避難条件の一つとして挙げられる。その間,避難すべき人間は,さまざまに行動している。例えば,岩手県山田町での避難行動の記録では(山田町2017),地震で怖くて抱き合う・じっとしている等,立退き避難時の衣服・携行品等の選択,家族・親戚の安否確認や送迎等,後片付け等の家の管理,沖出しを含む船の管理等が確認できる。</p><p> 一方,青森県から千葉県までの6県62市町村の津波浸水被害者2,768人を対象とするヒアリングでは,津波最大波到達直前の避難での移動手段として,車51.2%,徒歩46.4%,自転車1.1%,バイク0.6%,その他0.8%であった(国土交通省2013)。</p><p><b>Ⅳ 津波防災教育の展開</b></p><p> 東日本大震災の発災時,釜石市鵜住居で釜石東中学校生徒と鵜住居小学校児童等による高台避難にかかわる一連の行動は,“釜石の奇跡”として紹介され(いわて震災津波アーカイブHP等),津波避難行動の模範例とされている。気象庁でも,動画「津波からにげる」(気象庁2012)が作成され,全国の小中学校等での出前講義で活用して,津波避難時には高台避難を行うべきことが強調されいる。</p><p><b>Ⅴ 波源が近いあるいは既に到達している津波の危険性からの避難事例</b></p><p> 2022(令和4)年1月15日トンガ沖海底火山大噴火に伴う潮位変化時に,16日0時15分に津波警報が発表され,奄美市役所職員の概ね4分の3が路上を経由した「立退き避難系の避難」を行っている(岩船2022)。この時の「津波避難警報」は,最大3mの津波を想定し,津波が「既に到達」した状態であったため,避難経路において,標高2~3mの海沿いの低地の路上が最も危険であった。</p><p><b>Ⅵ 令和6年度 内閣府・喜界町「地震・津波防災訓練」</b></p><p> 喜界島では,完新世に,概ね1.0 ~ 2.1 ka間隔で4回の地震隆起が認められている(Sugiura et. al. 2003)。また,1911年6月15日に喜界島東方沖でM8.0の地震があり,津波の詳細は不明だが,喜界島赤連では遡上高8.0mとの記録が残る。</p><p> 令和6年度内閣府・喜界町「地震・津波防災訓練」では,①平常の状態で地震に見舞われてから何分で自宅を出られるか,②徒歩に限定せず,「実際に選択する移動手段」で避難してもらい,後のワークショップで,想定される津波到達時間数分との関係から避難行動を振り返ってもらった。1911年地震で発生するL1津波では屋内安全確保で身を守れる可能性が高いが,地震隆起を伴う概ね1.0 ~ 2.1 ka間隔でのL2津波では,有識者として「必ず助かる避難行動」を提示できず,高台避難と屋内安全確保および垂直避難で考えられる状況を説明するにとどまった。最終的には自宅や避難経路の標高等にも基づき,住民自身で避難方法を選択するしかない現状を伝えた。</p><p><b>Ⅶ 南海トラフ地震の津波での被害を減じるために</b></p><p> 南海トラフ地震による津波到達時間の想定は,津波高5mの最短到達時間が静岡県4分,和歌山県4分,三重県7分等と極めて短い(内閣府2012)。発生する津波の高さや到達時間,発表される津波警報・注意報の種類,自宅や避難経路等の標高,移動手段,自宅がある集落の道路状況等を,ワークショップ等を通じて,個人レベル(パーソナル・スケール)で総合的に把握して,個々に避難行動を熟考しておくべきであろう。</p><p><謝辞>本研究は,科研費基盤研究(C)(一般)「避難行動のパーソナル・スケールでの時空間情報の整理と防災教育教材の開発」(1 8 K 0 1 1 4 6)の一部である。</p>
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岩船 昌起 . 鹿児島市における直近十年での桜島火山対策の検証の試み . 日本地理学会発表要旨集2024a ( 0 ) 182 2024年9月
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記述言語:日本語 出版者・発行元:公益社団法人 日本地理学会
<p>【はじめに】本発表では,ここ十年程度における鹿児島市での桜島火山防災対策・施策を概観し,桜島住民の実態把握について,若干考察する。</p><p>【桜島火山爆発総合防災訓練】1971年1月12日に1回目が行われた(桜島町 1950, 1988)。2024年度で55回目となる。訓練日は,大正噴火発生日に因んで,1月12日(途中から前後の土日)であった。しかし,2020年度の51回目から,11月開催「住民避難訓練」と1月開催「避難所運営訓練・展示訓練」に分かれて,年2回開催となった。</p><p> 鹿児島市は「桜島火山爆発総合防災訓練」参加者にアンケートを行い,訓練の改善や桜島火山防災対策立案の根拠資料として活用している。ただし,訓練参加者は,概ね区長等による「動員」で集まるため,防災も含めて,意識が高い住民が多い。特に,避難行動要支援者と家族等の参加が少なく,「健常な歩ける人」の集計結果と考えるべきであろう。</p><p>【火山防災トップシティ】鹿児島市では,2019年から「鹿児島市火山防災トップシティ」を推進している(鹿児島市 2019)。①「大規模噴火でも『犠牲者ゼロ』を目指す防災対策」,②「次世代に『つなぐ』火山防災教育」,③「『鹿児島モデル』による世界貢献」を設定し,桜島火山防災に係る各種施策に取り組んでいる。①防災対策に「桜島火山爆発総合防災訓練」が位置づけられており,市考案の防災対策を桜島住民に周知する機能が期待されている。</p><p> 策定当初の「鹿児島市火山防災トップシティ構想検討委員会」には,大学研究者等の防災専門家5人,NPO法人関係者等の地域有識者4人の計9委員がいるものの,桜島出身者の住民を確認できない。</p><p>【セーフコミュニティ】「統計データ等の分析に基づき,事故やけがの原因を調べて対策を講じて予防する取り組み」である。WHO(世界保健機構)が推奨し,国際認証制度がある。鹿児島市では、2013年に認証取得を目指し,2016年認証取得し,2021年再認証取得している。①交通安全,②学校の安全,③子どもの安全,④高齢者の安全,⑤DV防止,⑥自殺予防,⑦防災・災害対策の重点7分野がある。</p><p> ⑦防災・災害対策では,「桜島地域における避難体制の再構築」が目標である。防災・災害対策委員会構成員は,町内会関係者7人,地元消防団2人,学識経験者2人,気象台,自衛隊,海保,警察4人,行政機関7人であり,避難行動の主体である桜島住民が中心である。</p><p>【セーフコミュニティでの調査方法】令和4年度には,市内居住の市民6,100人を無作為に抽出して質問紙を郵送し,郵送またはインターネットで回答が回収された(鹿児島市 2023)。有効回答数〔率〕は,市民3,297人〔54.0 %〕である。</p><p> ⑦防災・災害対策では,全市域でなく桜島地域が対象となるために,有効回答数が著しく減少する(鹿児島市 2024)。例えば,「住民の事前避難意向」では2022年〔n = 121〕,2019年〔n = 139人〕,2013年〔n = 439人〕である。また,母数が少ないことに起因してか,得られた割合も年度ごとに傾向が異なる。例えば,「高齢者自力避難の可否」では2022年「できる78. 5%,できない20.0 %」〔n = 65〕,2019年 「53.8 %,32.7 %」〔n = 52人〕,2013年「72.2 %,20.0 %」〔n = 245人〕である。</p><p>【鹿大学生調査】鹿児島大学では、共通教育科目「防災フィールドワーク」受講生を中心に、2018年度から33班118名が33題の研究が行われてきた。「桜島火山爆発総合防災訓練_展示訓練」に参加し、29題の研究発表も行ってきた。演題中の単語の出現頻度は,桜島24,意識19,避難17,噴火11,防災6,調査6,火山5,情報5,住民5,町5,バス3,校区3,地区2,島民2の順である。桜島の地域コミュニティのご協力を頂きながら,集落(人口50~400人)単位でフィールドワークを行い、聞き取りやアンケートで桜島島民の回答〔n = 10 ~ 100 人〕を頂き,桜島島民の「桜島火山防災」に係る実態解明を試みている。 2021年度の一つでは,鹿児島市が2016年度に行った桜島全世帯対象調査の回答について,住民35名中5人(14%)が「内容が変わった」との結果も得られている。</p><p>【考察】『犠牲者ゼロ』を達成するには,桜島住民の実態把握が重要である。立案すべき防災対策も,実際に避難する桜島住民等の実態によって異なるはずである。近年では,地区防災計画や個別避難計画の作成が推奨され,避難主体であるコミュニティや個人を重視する傾向が強まっている。「鹿大学生調査」は,コミュニティと個人を重視したものであり,これらの結果からも,桜島全世帯での実態調査が十宇年以内の短い周期で実施されるべきであろう。</p>
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岩船昌起 . 鹿児島大学共通教育科目での防災教育と地域連携―自治体主催訓練への学生の参加・運営補助― . 第71回九州地区大学教育研究協議会発表論文集 94 - 100 2024年3月
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担当区分:筆頭著者, 最終著者, 責任著者 記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(その他学術会議資料等)
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岩船 昌起 . 地震・津波に対する住民個々の備えに関するアンケート調査―西之表市・奄美市での内閣府「地震・津波防災訓練」の振り返り― . 日本地理学会発表要旨集2024s ( 0 ) 327 2024年3月
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記述言語:日本語 出版者・発行元:公益社団法人 日本地理学会
<p><b>【はじめに】</b>西之表市と奄美市で行われた内閣府「地震・津波防災訓練」で,参加者に「地震・津波への備え」アンケート調査を実施した。本研究では,この分析を通じて,同訓練の内容を振り返ることを目的とする。</p><p><b>【内閣府「地震・津波防災訓練」の概要」】</b>内閣府は,「津波防災」に関する取り組みの一つとして,平成26年度以降,全国の地方公共団体と連携した「地震・津波防災訓練」を実施している。令和5年度には全国10自治体で実施され,いずれも,モデル地区等での訓練前ワークショップ(WS),訓練,訓練後WSが行われた。演者が「防災専門家」として参画した西之表市と奄美市では,事前の測量や聞き取り調査から「地域の実情」にかかわるデータを得た上で,訓練の成果を地区防災計画や個別避難計画に生かす予定である。訓練では,シェイクアウト訓練,津波避難訓練,情報伝達訓練,防災に関する講話等が行われた。参加者数は,西之表市計1,865名(訓練前WS 150名,訓練1,644名,訓練後WS 71名),奄美市計1,743名(訓練前WS 25名,訓練1,693名,訓練後WS 25名)。</p><p><b>【調査方法】</b>訓練前WS(西之表市:2023年10月18日,奄美市:10月20日)後,参加者に①地震への備えおよび②津波への備えにかかわる質問紙に回答してもらった。回答者は,西之表市が参加者150名中91名,奄美市が参加者25名中13名。</p><p><b>【調査結果】</b>紙面の都合で西之表市でのものを一部掲載。</p><p><b>《①地震への備え》</b><i>Q3「家屋の造りは、何ですか?」</i>木造 79.5 %, 鉄筋造 14.0 %, RC造 5.4 %,わからない 1.1 %。<i>Q4「旧耐震、新耐震のどちらか?」</i>旧耐震 37.4 %, 新耐震 36.3 %, わからない 23.1 %, 未回答 3.3 %。<i>Q5「昼によくいる場所に、地震時に物が倒れてこないか?」</i> A倒れてこない 64.8 %,B倒れてきそう 33.0 %, わからない 2.2 %。<i>「Aの理由」</i>倒れそうなものを置いていない 28.4 %, 転倒防止対策等実施済 8.3 %, 低いものしかない 3.3 %,その他3.3 %,未回答 56.7 %。<i>「Bの理由」</i>置いてあるものへの不安(タンス,テレビ)35.3 %, 未固定・固定不足 26.5 %, 耐震強度不足・築年数 5.8 %, その他5.8 %,未回答26.5 %。<i>Q7「寝床に物が倒れてきませんか?」</i>A倒れてこない 73.6 %, B倒れてきそう 26.4 %。<i>Q8「夜の地震時には、どのように防ぎますか?」</i>屋外への移動 33.0 %, 屋内での行動 26.8 %, 事前の準備 19.6 %, その他3.6 %,未回答17.0 %。</p><p><b>《②津波への備え》</b><i>Q1「自宅地面の標高は、何メートルですか?」</i> 5 m未満12.1%, 5 m以上10 m未満4.4%, 10 m台14.3 %,20 m台8.8 %, 30 m台14.3 %, 40 m台7.7 %, 50 m以上31.9 %, 未回答等6.6 %。<i>Q3「家屋は、何階建てですか?」</i>1階72.5 %,2階23.1 %,3階2.2 %,4階1.1 %。<i>Q4「地震発生後、自宅から何分で出られますか?」「昼」</i>1分以内26.4 %,3分以内20.9 %,5分以内28.6 %,10分以内15.3 %,15分以内4.4 %,20分以内1.1%,未回答3.3 %。</p><p><b>【考察】《①地震への備え》</b>Q3「木造79.5 %」Q4「旧耐震37.4 %」であり,震度6弱以上の揺れに見舞われた際には,家屋が倒壊する恐れが高い。「シェイクアウト訓練」で模範とされるようにテーブル等の下に隠れても,それが脆弱な場合,家屋の倒壊に耐えられずに潰されて圧死する可能性が高い。また,夜間睡眠時や高齢者の緩慢な動作等も考慮すると,地震による危害の回避に「住民の行動」のみに依らず,家屋が倒壊した場合でも隙間が残されるように家具の配置を工夫する等,「生存空間の確保」を重視した家屋点検的な内容の方が被害軽減に有効であろう。</p><p><b>《②津波への備え》</b>内閣府(防災担当)「避難情報に関するガイドライン(令和3年5月)」での「立退き避難」「屋内安全確保」等を発災時に住民が選択するには,①気象庁による防災気象情報や自治体による警報等だけでなく,②住家(≒居合わせた場所)およびその周辺での安全/危険にかかわる場の情報,③体力等の避難者個人の特性等も考慮して総合的な判断が求められる。それには,Q1「自宅地面の標高」Q3「何階建て」Q4「自宅を何分で出られるか」等,②と③に関する項目の認識を質問紙等で確認するとともに,項目に関する検証(例えば,実際の測量等)を行い,その認識と現実とのズレを補正するような訓練が効果的であろう。そして,住民個人の備えにかかわる内容を,個々に具体的に検証してデータ化しつつ,要配慮者でなくても個別避難計画に順次まとめ,地区防災計画とも連動させていく必要があるだろ。</p>
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岩船 昌起 . 令和5年6月20~21日における奄美大島南部での豪雨災害(速報)― 宇検村低標高3集落における浸水被害の比較考察 ― . 日本地理学会発表要旨集2023a ( 0 ) 160 2023年9月
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記述言語:日本語 出版者・発行元:公益社団法人 日本地理学会
<p>【はじめに】2023年6月20~21日には,梅雨前線が奄美大島南部に停滞し,局地的に雷を伴う激しい大雨となった。人的被害はなかったものの,奄美市,大和村,宇検村,瀬戸内町で住家被害が報告されている(鹿児島県,6月26日)。被害があった4自治体は,龍郷町,喜界町等と共に「奄美群島総合防災研究会(2022年11月設立)」に参画している。</p><p>本発表では,「奄美群島総合防災研究会」のモデル地域でもあり,住家被害が最も多かった宇検村に注目し,降水量(雨量)の分析,2022年測量に基づく「浸水・被災の過程」,流域特性,満潮時間等を整理し, 7月6~9日現地調査結果等に基づき,宇検村3集落(名柄,部連,湯湾)での浸水被害の違いを検討する。</p><p>【降水量(雨量)】気象庁は,20日18時39分「顕著な大雨に関する気象情報」を発表し,21日には古仁屋で日降水量270.5ミリ(6月観測史上1位更新)を観測した。鹿児島県によると,6月20日0:00~21日23:50の48時間雨量は,大和村では,今里681㎜,大金久503㎜,大和ダム368㎜,宇検村では,宇検村592㎜,生勝475㎜,奄美市では,市447㎜,住用村402㎜,瀬戸内町では,節子525㎜,花天492㎜,深浦481㎜,瀬戸内町合庁429㎜であり,古仁屋(気象庁)429㎜より雨量が多い観測局が8局あった。今里,大金久,宇検村,生勝では,20日17~20時に48時間雨量の概ね半分が降り,花天,深浦,瀬戸内合庁では,21日5~9時に概ね半分弱から3分の1が降った。</p><p>【宇検村で防災事業】宇検村では,南西諸島「高島」の模試的な地形特性を有し,山と海に囲まれた標高約5 m以下の沖積低地に全人口約1,600人の9割程度が居住している。海沿い全13集落では,津波高潮等への対策として,溢流・越流等が予想される個所を測量し,住家の安全・危険性に係る浸水・被災の過程を考察(2022年4月),「危険潮位1.8 m」の設定(宇検村防災会議2022年5月31日),.高潮警報1.8 m,高潮注意報1.3 mへの改定(気象庁2023年1月26日)等進めてきた。</p><p>【3集落の地形特性】測量データに基づく「浸水・被災の過程」では,重要な局面として,床上浸水,河川や海からの直接の溢水・越流等が重視され,13集落で確認したところ,「名柄」での床上浸水1.7 ~ 1.9 m,河川溢流1.3 m,海溢流1.5 ~ 1.7 m,「部連」での床上浸水1.7 ~ 1.8 m,河川溢流1.7 m,海溢流4.6~4.8 m(防潮提上の県道),「湯湾」での床上浸水1.8 ~ 1.9 m,河川溢流1.4 ~ 1.6 m,海溢流1.9 mと分かった。名柄,部連,湯湾が他集落より低く,宇検村での「危険潮位」等設定の基準となっている。</p><p>3集落の河川特性として,名柄川では,流域面積(A)4.779㎢,幹線流路延長(E)3.569 ㎞,最高標高点434.7 m,流域形状比(A/E2)0.416であり,部連川では,順に2.260㎢,2.051 ㎞,345 m,0.537,湯湾川では,2.378 ㎢,3.569 ㎞,694.4 m,0.187である。流域面積は,名柄川が他2河川に比べて2倍程度である。流域形状比から,部連川が最も円に近く,名柄川が準じて,湯湾川が細長い形状であることが分かる。</p><p>【3集落での浸水害】宇検村では,半壊1件,床上浸水6件,床下浸水28件の住家被害が報告されており,低標高の3集落では,「名柄」では床上浸水5件および床下浸水6件,「部連」では床下浸水3件,「湯湾」では浸水0件である(宇検村,2023年6月23日)。「名柄」では,住家被害に係り,河川溢流3箇所,河川堤防決壊1箇所が発生した。被災者への聞き取り調査で,「名柄」では,「朝起きた時には浸水していなかったが,朝ドラが終わって(8:15),家の片づけの準備をして,始めようとした時(8:30頃)に,急に水位が増して,道路の反対側に止まっていた水が,道路を越えて(下流側にある)家の方に濁流となって押し寄せ,床下浸水した」等の証言を得た。21日朝8~9時頃に,満潮(名瀬検潮所21日8:16潮位86.0 cm,宇検村21日08:08潮位89.3 cm)との係りで氾濫が生じたことを複数から聞き取っている。一方,部連では,「山から水が来て,床下を通って抜けていった。夜20時頃と朝の2回床下浸水が起こった」「道路の排水溝に落ち葉等が詰まって流れなくなり,大雨の度にいつも浸水する道路の一部がまた浸水した」等,川からの溢流等による浸水はなかったが,「山からの水」等が排水せずに内水氾濫が生じたことに係る証言を複数から得た。</p><p>【おわりに】宇検村の他集落,大和村や瀬戸内町の被災者からの証言を得ている。さらに調査し,今後想定される大規模の災害への備えを強化したい。</p>
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岩船昌起 . 奄美群島での個別避難計画の策定と情報共有-東日本大震災時の「避難行動要支援者」の避難事例を顧みつつ . 日本地理学会発表要旨集103 41 - 41 2023年3月
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記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(その他学術会議資料等)
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岩船 昌起, 安部 幸志 . トンガ大噴火「潮位変化」による津波警報後の避難行動― 奄美市職員へのアンケート調査に基づく速報 ― . 日本地理学会発表要旨集2022a ( 0 ) 115 2022年9月
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記述言語:日本語 出版者・発行元:公益社団法人 日本地理学会
<p><b>【はじめに】</b>2022(令和4)年1月15日13時頃のトンガ沖海底火山大噴火に伴い,20時頃から潮位変化が日本沿岸全域で生じた。23時55分に奄美市小湊で高さ(潮位偏差)1.2 m(変更後134㎝)が観測され,気象庁は、16日0時15分に津波警報を奄美群島・トカラ列島に発表した。これを受けて,奄美群島市町村では0時18分~0時32分に避難指示が発令され、報道機関等で「高台への避難」が強調された中で,未明に住民避難が行われた。本稿では,奄美市職員へのアンケート調査を用いて,今回の津波警報発表にかかわる避難行動等を検証する。</p><p><b>【方法】</b>奄美市総務課危機管理室の協力により,奄美市専用電子システムを活用して,津波避難行動等にかかわるアンケート調査を5月23日~6月2日に行い,奄美市職員123人からの回答を得た。なお,欠損値等の一部で,他の回答から推測可能な箇所については補填した上で分析を行う。一方,住所の記述から,国土地理院基準点や地形や街区構造を参考に,自宅立地面および居住床面の推定標高を0.1 m単位で見積もる。3分の1程度で番地未記入等もあり,また基準点間の間隔が広い箇所もあり,推定標高の値については,精度に違いがある。 </p><p><b>【結果1】</b> 質問項目ごとにいくつか列記する。<u><i>問1 自宅の標高を知っているか。</i></u>知っている33%,知らない67%。<u><i>問2 津波警報等を最初に,何で知ったか。</i></u>携帯電話65%,防災行政無線25%,テレビ5%,家族(同居+別居)4%,未回答1%。<u><i>問3 津波警報等を,いつ知ったか。</i></u>気象庁発表(0時15分)後41%,避難指示発令(0時18分)後59%。<u><i>問5 津波警報を知った場所。</i></u>木造家屋1階29%,木造家屋2階以上24%,鉄筋造1階2%,鉄筋造2階以上12%,RC造1階6%,RC造2階以上24%,車の中1%,未回答2%。<i><u>問10 津波警報等を知って,どのくらいの時間で移動(避難)開始したか。</u></i>5分以内23%,30分以内43%,1時間以内3%,1時間以上2%,移動しなかった29%。<i><u>問11 どこに避難したか。</u></i>高台避難59%,避難所3%,隣人宅2階以上10%,自宅2階以上6%,自宅等で寝床等から動かず20%,その他1%。<i><u>問14 避難時の移動手段は,何か。</u></i>車50%,自動二輪2%,徒歩17%,移動せず30%,その他1%。<i><u>問15 どのくらいの時間で避難(移動)完了したか。</u></i>5分以内29%,10分以内18%,20分以内11%,30分以内8%,40分以内1%,1時間以内1%,1時間以上2%,移動しなかった30%。<i><u>問16 いつ自宅等に戻ったか。</u></i>1時過ぎ3%,2時過ぎ7%,3時過ぎ2%,4時過ぎ3%,5時過ぎ2%,6時過ぎ5%,7時過ぎ13%,避難指示解除7時30分過ぎ29%,自宅に残った33%,他の場所に移動3%。 </p><p><b>【結果2】</b>自宅立地面の推定標高は3 m以下67人,3 m超5 m以下28人,5 m超10 m以下14人,10 m超10人であり,居住床面の推定標高は3 m以下7人,3 m超5 m以下31人,5 m超10 m以下45人,10 m超33人である。また,問1で回答された「自宅の標高」と,筆者が判断した自宅立地面の推定標高との関係は,y = 0.73x + 0.99(R2=0.489)である。「自宅の標高」を,やや低く認識している傾向がある。 </p><p><b>【考察】</b>問1より,自宅の標高を知らない人が過半数を占め,結果2の相関関係式との関係から,知っている人でも自宅の標高を低めに認識している可能性がある。標高への住民意識が低いこと,標高掲示版が1 m単位で表示されていること等が,理由として挙げられる。 自宅立地面の推定標高3 m以下が67人と低いものの,居住面の推定標高3 m以下が7人であったことから,立ち退き避難により,標高が低い路上で,生身のまま津波に遭う可能性が高い避難環境にあることが分かる。問11より,立ち退き避難系73%(89人)であり,既に津波が到達している状況下で立退き避難を行っているために,津波警報通り「最大3 m」の津波の襲来があれば,危険な状況に遭っていた人が一定数いたと考えられる。そのまま自宅にとどまり,2階以上に垂直避難する等を選択した方が緊急安全確保につながる避難行動であったと思われる。</p><p><b>【おわりに】</b>今回の津波警報による避難行動では,津波が既に到達している状況下で,立ち退き避難系が4分の3程度いた等,実態の一端が把握された。本発表では奄美市職員対象の内容を紹介したが,同様のアンケート調査を喜界町,龍郷町,宇検村等でも実施しており,質問項目ごとの回答の違い等について,地域とのかかわりも含めて,今後考察する。 </p><p><b><謝辞></b>奄美市総務課危機管理室には,アンケート調査にご協力いただいた。</p>
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岩船昌起 . 奄美大島宇検村における台風高潮時の避難対象の検討―全住民避難計画の基礎資料― . 日本地理学会発表要旨集101 55 - 55 2022年3月
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担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(その他学術会議資料等)
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岩船昌起 . 避難所としての鹿児島大学第二体育館の空間評価-レイアウトに基づく定員設定と混み具合の考察- . 鹿児島大学総合教育機構紀要5 31 - 46 2022年3月
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担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(大学,研究機関等紀要)
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岩船 昌起 . 奄美大島宇検村における台風高潮時の避難対象の検討 . 日本地理学会発表要旨集2022s ( 0 ) 150 2022年3月
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記述言語:日本語 出版者・発行元:公益社団法人 日本地理学会
<p>【はじめに】地球温暖化による「猛烈な」台風の襲来に備えて,沿岸の低標高地域では高潮対策を講じる必要がある。また,2022年1月15日フンガ・トンガ–フンガ・ハアパイ火山大規模噴火に伴う潮位変化等,突発的な津波への備えを強化する必要がある。奄美大島宇検村では,南西諸島「高島」の模試的な地形特性を有し,山地と海に囲まれた沖積低地が居住域で,大半が標高5m以下であり,台風高潮や津波等の急激な潮位変化での浸水が想定される。演者は,鹿児島県防災アドバイザー制度等を通じて,2020~2021年に宇検村での住民ワークショップ等を4回行い,特に台風高潮対応に関するリスクコミュニケーションを重ねている。本発表では,湯湾区での浸水段階ごとの避難対象や避難可能場所等を検討し,これにかかわる全住民避難計画実施上の課題を挙げる。</p><p>【方法】宇検村は,人口1,621人,高齢化率43.2%である(令和2年10月1日現在)。宇検村最大の行政区・湯湾区は,240世帯,人口458人(男214,女244)であり(令和3年12月末日現在),役場や消防分駐所等の行政機能が立地する。ここで,現地調査等から構造(木造・鉄筋造・RC造)や階層から家屋を分類し,水準点および地形特性から居住地の標高を凡そ把握する。また,高潮警報・注意報の基準値,「災害に係る住家の被害認定基準運用指針/浸水深による判定」等も活用する。</p><p>【結果】家屋分類の結果,湯湾区では,木造1階の家屋が多く,RC造2階以上の建物が役場や村営住宅等に限られる(図1)。地盤高が未測量であるものの,役場前の一等水準点(標高 2.7364 m)から(国土地理院HP),居住地が広がる沖積低地では標高2~4 m程度と推測される。また,高潮警報と高潮注意報の潮位は,2.4 mと1.5 mである(気象庁HP)。</p><p>【考察】津波襲来に対しては,自家用車等を活用して高所避難が可能だが,「猛烈な」台風襲来時には,暴風も伴い,車中避難ができない。また,新型コロナウイルス感染症対策も考慮すると,村内の頑強な建物を有効活用して,避難者生活空間(個人占有区画一人当たり4 ㎡以上,通路幅1 m)十分に確保した分散避難が,台風時の避難場所として望ましい。</p><p> 上記の結果と,「災害に係る住家の被害認定基準運用指針/浸水深による判定」を参考に,浸水段階ごとの避難対象家屋と避難可能場所等が表1にまとめられる。潮位1.5 m以上2.4 m未満が高潮注意報発表時で,レベル3(高齢者等避難)相当である。潮位2.4 mに達すると高潮警報が発表され,レベル4(避難指示)となる。さらに潮位が上昇すれば,防潮堤の高さを潮位が上回り,海岸・河川沿いの家屋で床下浸水が始まる。この時道路が既に浸水しており,レベル4以降他家屋に徒歩移動できない場合が生じる。レベル5(緊急安全確保)では,潮位が高い程,家屋の被災度合い(床下浸水~倒壊・流失)が大きくなる。従って,レベル3までに,後の潮位最高値が明確に予報され,避難可能場所が的確に判断されないと,潮位上昇に伴い死傷者が発生する恐れがある。</p><p> 課題として,次が挙げられる。①高潮警報の基準値前の潮位で,防潮堤の切れ目や河川を遡って浸水する事例が奄美大島内で生じており,行政区(集落)ごとに浸水箇所を測量等して,高潮警報の基準値を見直す必要がある。また,②各家屋の安全性の確認のためにも,居住域での標高をパーソナル・スケールで把握する。以上を克服しつつ,③浸水想定ごとの避難対象と避難者数を特定し,④堅固なRC造2階以上の建物を基本として,避難所定員との兼ね合いから,個人宅避難の整備を進める。一方,⑤自主防災組織の再編成等を進め,住民連携をさらに強化する。</p><p>【おわりに】台風高潮避難計画にかかわり,浸水段階ごとの避難対象と避難可能場所等を整理した。宇検村では避難行動要支援者の個別避難計画今年度策定を目指している。今後避難計画全体の社会実装を進めたい。</p><p><謝辞>本研究の一部は,科研費基盤研究(C)(一般)「避難行動のパーソナル・スケールでの時空間情報の整理と防災教育教材の開発」(課題番号:1 8 K 0 1 1 4 6)の一部である。</p>
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岩船 昌起, 田村 俊和, 松井 圭介, 戸所 隆 . 特集号「『ローカルな災害記録』の実態とあり方─他地域や後世にも伝える時空間情報の提示─」巻頭言 . 地学雑誌130 ( 2 ) 147 - 151 2021年4月招待 査読
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担当区分:筆頭著者 記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(学術雑誌) 出版者・発行元:公益社団法人 東京地学協会
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IWAFUNE Masaki, TAMURA Toshikazu, MATSUI Keisuke, TODOKORO Takashi . Overview of the Special Issue "Local Records of Natural Disaster Events: A Wealth of Spatiotemporal Information for Future Use" . 地学雑誌130 ( 2 ) 143 - 146 2021年4月招待 査読
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担当区分:筆頭著者 記述言語:英語 掲載種別:研究論文(学術雑誌) 出版者・発行元:公益社団法人 東京地学協会
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田村 俊和, 岩船 昌起 . ローカルな災害記録:─そこに書き残されていること,書き残しておきたいこと─ . 地学雑誌130 ( 2 ) 153 - 176 2021年4月招待 査読
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担当区分:最終著者 記述言語:日本語 掲載種別:研究論文(学術雑誌) 出版者・発行元:公益社団法人 東京地学協会
<p> When major natural disasters occur, not only scientific and national administrative parties but also individuals and organizations from the local areas affected by the disaster prepare a variety of reports. Considering the general structure of natural disaster processes that occur and progress in diverse and specific spatiotemporal conditions, such reports prepared locally are expected to contribute to both reminding residents of the disaster and to improving future hazard-mitigation measures of the area concerned. At the same time, being based on primary sources related to various hazard-triggered local events, the reports support a more comprehensive understanding of the disasters as a whole. This paper reviews numerous reports on major tsunami disasters that occurred on the Sanriku Coast, Northeastern Japan, since the late 19th century. Most reports on the 1896, 1933 and 1960 tsunami disasters were prepared by local intellectuals supported in some cases by local governments. After the 2011 tsunami, most stricken municipalities published reports with financial assistance from the national government, and some of them received reporting and editing assistance from outside experts, including scholars and journalists. As local reports are prepared in a situation of potentially plentiful primary sources related to various aspects of the disaster in the area, the results of such reports depend heavily on the collection and presentation of primary sources. Report writers, including outside experts, contribute to reporting, editing, and presenting using suitable images, maps, tables, and narratives. For more effective use of the primary sources, it is suggested that these people have an adequate perspective of both the overall structure of disaster processes and the local conditions of the area concerned.</p>
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岩船 昌起 . 新型コロナ下における自然災害への備え . 生活協同組合研究540 ( 0 ) 12 - 21 2021年1月
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岩船 昌起 . 鹿児島県市町村避難所での2020年台風10号時運営と新型コロナウイルス感染症対策 . 日本地理学会発表要旨集2021 ( 0 ) 61 2021年
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記述言語:日本語 出版者・発行元:公益社団法人 日本地理学会
<p><b>【はじめに】</b>災害時の新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)対策が必要な中,「猛烈な」強さに発達が予報された台風10号が2020年9月6~7日に鹿児島県に強い影響を及ぼし,県内市町村で避難所が多く開設された。本発表では,岩船(2020,2021)を踏まえ,鹿児島県「避難所管理運営マニュアルモデル〜新型コロナウイルス感染症対策指針」(以下「県避難所COVID-19対策指針」)と照合しつつ,市町村での避難所運営実態を再検証する。</p><p><b>【「県避難所新型コロナ対策指針」の概要】</b>2020年6月1日に策定され,①避難所となる施設や敷地を事前にレイアウトして事前に空間利用を計画し,定員数等を定める,②受付での水際対策を徹底する,③「感染疑い者」等を認識する目安として,検温や体調の自己申告の他に,行動歴の任意提示も参考とする,④「感染疑い者」には別室での自主的隔離を基本として,非「感染疑い者」と生活空間を別にする,⑤安全確認できれば自家用車も「自主隔離空間」として活用する, ⑥定員超過の場合でも,感染死亡・重症化リスクが高い高齢者等を除き,リスクが低い者から身体的距離2mを短縮する,⑦またその同意を事前に得ること等の特徴がある。</p><p><b>【避難場運営の実態と今後の課題】</b>鹿児島市では, 2020年10月1日現在での市人口598,481名の0.8%に相当する4,854名が避難所に入所し,205施設中13施設で定員超過した。以前から「避難所が定員超でも入所希望する全員を受け入れる」方針であったため,感染リスクを恐れて避難所以外に「分散避難」した市民が多かったが,洪水浸水想定区域や土砂災害警戒区域等に立地する住家が相対的に多く,避難所となる公的施設も人口比で少ないことから,既存の避難所運営計画では十分に対応できなかった。また,HP「避難所における新型コロナウイルス感染症対策」の「避難者の十分なスペースの確保」を定員超過の避難所で実現できず,「県避難所COVID-19対策指針」上記 ⑥と⑦の対応を行わなかった。</p><p> 暴風圏内の屋外では暴風で人が死傷する恐れがあるが,COVID-19「致死率」は80代以上12%等を踏まえると(厚生労働省2020『新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き第4.1版』),特に「ステージⅣ(感染者爆発的拡大)」等の感染拡大の警戒基準時や,居住域が広範囲で被災した場合を見越しての対策が講じられるべきである。</p><p> 一方,瀬戸内町では,台風10号避難所入所者総数は176名であり,2019年4末現在で全人口8,941名の2.0%に止まった。117名の避難者が集まった「きゅら島交流館」では,結果として定員数を上回らなかったこともあり,「県避難所COVID-19指針」を参考に町保健師が事前に計画した避難所レイアウト案に沿って,避難者の空間配置を適切に行えた。しかし,台風進路に近い喜界町では, 2020年10月1日現在での町人口6,606名の14.7%に相当する973名が避難所に避難し,17施設中3施設で定員を超過した。「県避難所COVID-19指針」を参考に喜界町では人口密集地域の避難所レイアウト案を事前に作成したものの,想定超の避難者が押し寄せた避難所では,適切な空間利用に至らなかった。</p><p><b>【課題解決の動き】</b>奄美大島では,日本の諸地域と同様に,標高5m以下の沖積平野に居住域が広がり,スーパー台風時に5m高の高潮が発生すれば,避難所も含めた居住域が広く被災する。演者は,COVID-19対策も含めてこの災害想定時の対策づくりとして,地域コミュニティの住民一人一人の避難手段・経路・場所をパーソナル・スケールで検討するワークショップを行っている。例えば,宇検村では,モデル地区での村民アンケート調査を行い,スーパー台風時の個々の避難計画づくりに着手した。来年度以降に全村に活動を広げて村民2,000人の避難台帳づくりを予定している。</p><p><b>【おわりに】</b>鹿児島県内市町村での台風10号避難所運営では,地域性に応じて多少の混乱があった。これらを踏まえて,「県避難所COVID-19対策指針」改訂や,避難所運営計画も含めたコミュティでの地区防災計画立案にかかわる研修等を市町村で行い,課題解決につなげたい。</p><p><b><参考文献></b>・岩船昌起2020.鹿児島県市町村での2020年台風10号避難所運営の実態−新型コロナウイルス感染症対策も含めて.季刊地理学,72(3),ページ未定.※東北地理学会2020年秋発表要旨.</p><p>・岩船昌起2021.新型コロナ下における自然災害への備え−大規模化する災害へ対処するために.生活協同組合研究,540,11-18.</p><p><b><謝辞></b>本研究は科研費基盤研究(C)(一般)「避難行動のパーソナル・スケールでの時空間情報の整理と防災教育教材の開発」(1 8 K 0 1 1 4 6)の一部である。</p>
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岩船 昌起 . 新型コロナウイルス感染症対策を考慮した避難所定員(収容可能人数)の算出方法 . 日本地理学会発表要旨集2021 ( 0 ) 87 2021年
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記述言語:日本語 出版者・発行元:公益社団法人 日本地理学会
<p><b>【はじめに】</b>災害時の新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)対策が注目される中,「猛烈な」強さに発達すると予報された台風10号が2020年9月6~7日に鹿児島県に強い影響を及ぼし,県内市町村の多くで避難所運営に混乱が生じた(岩船 2021a;2021b)。特に,避難所定員(収容可能人数)の根拠が曖昧で,COVID-19対策上十分な身体的距離を保てなかった避難所がより多く存在した可能性が高い。また,避難者に周知される避難所の「空き」「混雑」「満員」の混み具合は,定員に基づく百分率等で便宜的に表している場合が多く,COVID-19対策上の意味合いが検討されていない。そこで,本研究では,避難所間取図で入所者の空間的配置進行のシミュレーションを行い,定員の簡易的算出方法を検討し,身体的距離の分析から避難所の混み具合を考察する。</p><p></p><p><b>【方法】</b>鹿児島大学第二体育館等,指定避難所となる4施設の間取図から避難所レイアウト案を作成して,個人空間(施設内で個人専有区画を設定できる空間),共用空間(入所者が共同利用するトイレや更衣室等の空間),調整空間(発熱者等を分離するための予備的空間),使用不可空間(施設管理等のために使用できない空間)を設定する。その上で,個人空間と認められた6室に,通路幅1mで,一人当たり4m<sup>2</sup>の個人占有区画を設け,定員を見積もる。また,心理的距離も考慮して,個人占有区画に入所者が順に入る簡易的にシミュレーションを行い,避難所での混み具合に応じた身体的距離が短縮する状況を検討する。</p><p></p><p><b>【定員】</b>個人占有区画一人当たり4m<sup>2</sup>,通路幅1mとする基準では,鹿児島大学第二体育館大ホール(約1,054㎡)で110人,卓球場(約285㎡) で30人が定員である。他施設で見積もった値も加えた定員と個人空間の床面積との関係は,図1の通りであり,両者に高い相関関係(y=0.097x+3.04, R<sup>2</sup>=0.98)が認められる。一定の面積を一様のパターンで区画付けるものであり,当然の結果であろう。これに基づくと,個人占有区画一人当たり4m<sup>2</sup>,通路幅1mでの定員を簡易的に求めるには,区画を設ける個人空間の床面積に0.1を乗じればよいことが分かる。</p><p></p><p><b>【身体的距離の変化】</b>鹿児島大学第二体育館大ホールで,個人占有区画に入所者が順に入る簡易的シミュレーションしたでの,収容人数と個人占有区画間の最短距離との関係は,図2の通りである。入所者が心理的距離を可能な限り大きく取り自由選択で入る場合と管理者が身体的距離の最短値が可能な限り最大となるように区画を指定する場合とで比較する。その結果,定員約50%を目安に,個人空間内で前後か左右で隣り合う個人占有区画2つに入所者が配置される状態が出現し,COVID-19感染リスクが高まったことを確認できる。そこで,「空き」を前後左右の隣り合う個人占有区画に世帯・個人がいない場合,「混雑」を前後左右に1個人でもいる場合と定義づけると,定員50%を「混雑」と判断できる。</p><p></p><p><b>【考察】</b>避難所定員公表の際には,人数だけでなく,入所者に提供される個人占有区画一人当たりの面積や通路幅の基準も提示されるべきである。一方,定員を超えて避難者を受け入れる際には「トリアージ的な発想で入所者間の身体的距離を短縮する」対応が必要となる。少なくとも入所時にはこの説明が必要であり,会話制限等,短縮時のCOVID-19対策強化のお願いも併せて行うべきであろう。また,区画を変更して入所者の配置を変える際にも,検温結果等の他に,直近2週間の行動歴,ワクチン接種状況等,問診票等で任意での情報提供に基づく必要がある。</p><p></p><p><b>【おわりに】</b>本研究では,「個人占有区画一人当たり4m<sup>2</sup>,通路幅1m」を一例として,避難所定員を求める簡易的方法と「混雑」等のCOVID-19対策上の意味合いを考察した。鹿児島県「避難所管理運営マニュアルモデル〜新型コロナウイルス感染症対策指針」第3版改訂に生かしたい。</p><p></p><p><b><参考文献></b>・岩船昌起2021a.新型コロナ下における自然災害への備え−大規模化する災害へ対処するために.生活協同組合研究,540,11-18.</p><p></p><p>・岩船昌起2021b.鹿児島県市町村避難所での2020年台風10号時運営と新型コロナウイルス感染症対策.日本地理学会発表要旨集。</p><p></p><p><b><謝辞></b>本研究の一部は,科研費基盤研究(C)(一般)「避難行動のパーソナル・スケールでの時空間情報の整理と防災教育教材の開発」(課題番号:1 8 K 0 1 1 4 6)の一部である。</p>
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岩船 昌起 . 令和2年7月豪雨における熊本県球磨村での避難行動 . 日本地理学会発表要旨集2020 ( 0 ) 2020年
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記述言語:日本語 出版者・発行元:公益社団法人 日本地理学会
<p><b>【はじめに】</b>本研究では,球磨郡球磨村を対象地域として,平成 24(2012)年熊本広域大水害を顧みた上で,令和2年7月豪雨災害時の緊急避難の逃げ道に注目し,予測し難い局地的大雨による水害時の住民避難行動を考察する。</p><p></p><p><b>【平成</b><b>24</b><b>年熊本広域大水害を顧みて】</b>2012年7月12日には,球磨村一勝地で日降水量238㎜,時間降水量11〜12時 39.5㎜,20〜21時 46.5㎜が記録された(気象庁)。7月12日7時〜13日7時の積算降水量は240.5㎜に及ぶ。この時,球磨川水系中園川沿いの高沢地区では,数軒が床下浸水し,内1軒では在宅住民が「床上浸水になったら庇をつたって山側に逃げる」つもりで2階に避難していた(岩船,2015)。</p><p></p><p>熊本県では,平成24年熊本広域大水害を顧みて,平成 25 年度から住民避難モデル実証事業等にて「予防的避難」の導入に取り組んだ。これは,「避難準備・高齢者等避難開始」発令以前で一般住民にも「日没前の明るいうちに」事前に避難を促すものである。台風のように数日前から豪雨を明確に予測できる場合には有効な対策であり,全国的にも広がりをみせた。しかし集中豪雨や局地的大雨の強度・頻度が増している昨今,現在の観測技術では突発的な局地的大雨を高い精度で予測し難しく,予防的避難が実現し難い場合での避難計画も事前に準備しておく必要がある。</p><p></p><p>筆者は,国土交通省九州地方整備局「九州地方の大規模土砂災害における警戒避難対策検討委員会(平成 25〜26 年度)」を通じて,モデル地区の球磨村高沢地区で高齢者中心の住民の体力や熊本広域大水害時の避難行動を調べ,予防的避難がなされなかった場合での浸水段階に応じた緊急避難計画を考案した(岩船,2015)。中園川が溢流すると左岸と右岸で行き来できなくなり,両岸それぞれでも地形的行動障害があることから,集落を5区分して,浸水段階と微地形に応じて,避難経路が浸水する前に斜面上方の親類・知人宅等へ移動し,大規模土砂災害が想定される最も危機的な状況下でもヘリコプター救助場所への"逃げ道"が絶たれないようにした。これは,ヘリコプター救助段階を除いて,昭和40年7月豪雨災害時の避難行動の空間的展開に類似しており,「雨が降れば自宅に戻る」日常行動に端を発した緊急避難計画である。</p><p></p><p><b>【令和</b><b>2</b><b>年</b><b>7</b><b>月</b><b>3</b><b>〜</b><b>4</b><b>日球磨村高沢地区での避難行動】</b>一勝地での降水量は,2020年7月3日日降水量 119 ㎜,4日日降水量357㎜が記録され,時間降水量が4日4〜5 時に76 ㎜の最大値であった。3日10時〜4日10時の24時間積算降水量455.5㎜であった。また,気象庁等は,球磨村に,3日21時39分大雨警報(土砂災害),22時20分土砂災害警戒情報,22時52分洪水警報,4日1時34分に大雨警報(浸水害・土砂災害),4時50分大雨特別警報を発表した。</p><p></p><p>7月31日時点で高沢地区を現地調査できていないが,被災後の現地撮影資料(例えば,ピースワンコ・ジャパン,7月11日救助活動動画)から,中園川に直面する家屋では床上・床下浸水程度の被害と認識できた。一方,令和2年7月豪雨による熊本県での死者・行方不明者67名中25名が球磨村住民であり,全てが球磨川本流地区住民{渡(自宅)2名,渡(千寿園)14名,一勝地6名,神瀬3名}であり(熊本県資料),高沢地区を含む山間地域の球磨川支流地区住民の報告はない。</p><p></p><p>従って,床上・床下浸水の被害が及んだ中園川沿いの高沢地区住民は,7月3日から在宅し,大雨による増水で自宅等の浸水の恐れが高まった4日未明から早朝に緊急避難したと思われる。</p><p></p><p><b>【考察】</b>熊本県では「予防的避難」の延長として「熊本県版タイムライン」を2015年4月に策定し,事前予測が可能な大雨への対応策を予め準備してきた(熊本県HP)。しかし,気象庁が予測できない想定外の大雨の発生を否定できないことから,緊急避難的な対応を保険的に準備しておくべきであった。死者・行方不明者が生じた球磨川本流沿いの地区は,元々浸水しやすい地形上にあり,かさ上げで居住地の比高を増したものの,浸水を想定しての緊急避難での逃げ道を確保していない場合が多かった。一方,死者・行方不明者が生じなかった山間地域の球磨川支流地区では,浸水が小規模であったことと,緩斜面上に集落が立地しており,津波立ち退き避難で山麓緩斜面が逃げやすい地形であったことと同様に(岩船,2018),緊急避難しやすかった。</p><p></p><p><b><文献></b></p><p>・岩船昌起2015.水害・土砂災害における高齢者の体力と避難行動−2012年熊本広域大水害時の球磨村での検証.『第14回都市水害に関するシンポジウム講演論文集』,11-18.</p><p>・岩船昌起2018.個人の「避難行動」を記録する意義−パーソナル・スケールでの時空間情報の収集と整理.地理,63(4),22-31.</p>