共同研究・競争的資金等の研究 - 塗木 淳夫
-
二重経頭蓋磁気刺激法による運動前野・運動野の興奮性と運動観察の基礎的研究
研究課題/領域番号:21650154 2009年4月 - 2010年3月
日本学術振興会 科学研究費補助金 挑戦的萌芽研究
丸山 敦夫、前田 雅人 、塗夫 淳夫
担当区分:研究分担者 資金種別:競争的資金
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
本研究は、実戦的な動作の運動観察や模倣が、運動技能獲得にいかに重要なのかを脳神経科学の面から明らかにすることである。特に、二重経頭蓋磁気刺激法(TMS)を用いて運動観察が初心者の運動技術獲得に重要であるかを腹側運動前野と運動野の興奮性から検討した。2年間の研究から以下のことが明らかになった。
1) 投球動作観察においては、野球経験者の視線距離は未熟練者より短く、注視時間は顕著に長かった。野球経験者は投動作に対する視線軌跡に順序性が見られ動作の観察のための注視時間が長かった。しかし、未熟練者では動作の追従性が見られず視線距離も長く動作を熟視する時間が短いことが示された。2) 野球経験者の動作観察時には皮質内抑制はコントロール値より脱抑制し運動観察が熟練者の運動野の興奮性を変えたことが示された。未熟練者には皮質内抑制の低下を確認することができなかった。投動作観察中、腹側運動前野と運動野の抑制は野球経験者では低下する傾向にあったが未熟練者にはなかった。このことからミラーニューロンを多く持つ腹側運動前野と運動野の連携で起こる熟練者の抑制は動作観察中に低下するという傾向が示され、観察中に運動野の興奮性を変える可能性が見られた。しかし、腹側運動前野への刺激ポイントの同定が人によって異なり難しく、より明確に二重刺激による腹側運動前野から運動野への連携を見出すためにはMRIの活用などによる個人の同定法を開発する必要があると考える。
以上の点から運動技能獲得のためには運動観察や模倣の重要性を明らかにしようと試みた。その結果かなりの成果を得て研究の目的を達成する結果に近づいたが、いくつかの問題点も明らかになった。それは二つのTMSコイルを用いた腹側運動前野刺激ポイントの同定を明確にする手段を考えるには、今後より充実した実験環境を整えて研究を進める必要がある点である。 -
Brain mechanisms involved in conscious visual perception, object substitution masking, and the interaction between different brain regions
2008年4月 - 2008年10月
海外 研究助成
資金種別:競争的資金
Brain mechanisms involved in conscious visual perception, object substitution masking, and the interaction between different brain regions
-
in vivo計測によるラットの神経-筋を用いたパルス磁気刺激の影響に関する研究
2006年4月 - 2008年3月
その他機関 研究助成金
資金種別:競争的資金
in vivo計測によるラットの神経-筋を用いたパルス磁気刺激の影響に関する研究
-
局所筋疲労回復を目指した磁気刺激装置の開発に関する研究
研究課題/領域番号:15300205 2003年4月 - 2006年3月
日本学術振興会 (英語): 科学研究費補助金 基盤研究(B)
湯ノ口 万友、王 綱、塗木 淳夫
配分額:7500000円
生体へのパルス磁気刺激法は、最近ではパーキンソン病などの治療やリハビリテーションの領域においても注目されている。しかし、磁気刺激の強度や刺激方法については明確な手法が確立されていない。もっぱら、強い磁気刺激が用いられている。しかも、磁気刺激の興奮部位についても極在性だけが問題とされているだけで、刺激効果のメカニズムについてはいまだ不明瞭である。本研究では、弱磁気刺激を局所筋疲労回復の治療に用いることを目的に、むしろ刺激の局在性よりも生体内に流れる渦電流の分布に着目して、新しい磁気刺激装置の開発を目指している。そのため、生体を模擬した物理的なモデルを用いて生体内の渦電流分布の解明と筋疲労回復に対する磁気刺激の効果の定量的解明を試みている。平成17年度は、平成15年、平成16年度の実績をもとに、被験者を増やし、特に男女間での発揮筋力に対する疲労の定量化を実現した。また、平成17年度においては弱磁気刺激によって筋疲労が回復されることを発揮筋力の測定から検討し、弱磁気刺激の局所筋疲労に対する回復効果が約90%の高い割合で認められた。筋疲労に対する弱磁気刺激は、筋肉を動かす強い刺激でのマッサージ効果を与えなくても、きわめて微弱な渦電流を生体に流すことによって筋疲労回復を促進することを示唆している。また、さらにこれらの結果をもとに新しい磁気刺激装置とフレキシブルなコイルを試作した。コイルは約100ミクロンの厚さの銅箔を用いて切り抜き、ラミネート加工したものである。刺激装置の電源部はIGBT素子を用い、パルス電流をコイルに流し、パルスの回数、時間等のパラメータを自由に変えられるようにした。しかしながら、試作した磁気刺激装置の評価までには到らなかった。今後は、この試作機を用いて、筋疲労回復効果について定量的な計測を進めていくつもりである。
最後に、本科学研究費補助金の助成を受けましたことに深謝いたします。